東野圭吾『聖女の救済』 ≪評価:4≫

聖女の救済
上手い。前作にはインパクトという点では劣るものの、なかなかの大技トリックを見事に長編に仕立て上げている。ドラマ(及び映画)における設定をさらりと取り込む辺りもまた上手い(ただ福山云々の部分はあざとすぎる気も)。しかし何より今作は構造的に前作よりも練り上げられている。
反復における時間差がそのままトリックに転化する、そしてまたそのことによって犯人の形容しがたい論理/心理/真理が前面化し、同時にそれは被害者のグロテスクとも言える論理/心理/真理を浮かび上がらせる。すなわち二重化された反復。そのそれぞれの終点に〈死〉という穴が置かれているのは必然だが、その反復から〈生〉が産み落とされている点もまた、エンタテインメントとしてのバランスを考えるならば必然(そもそもこの反復を生じさせているものこそ〈生〉と〈死〉)。しかしそこに東野圭吾という作家のバランス感覚が見事に発揮されている。