汀こるもの『パラダイス・クローズド』 ≪評価:2≫

パラダイス・クローズド THANATOS (講談社ノベルス)
正直、こういう作品には評価は辛くなるよ。「本格ミステリを打ち倒そうとする新人」云々という帯の言葉を、あの有栖川が書いていることからもわかるように、「本格」という枠を何ら抜け出すものではない。これは単に枠組みの一段上に立っているように見えるだけで、結局は同じ枠組みによる作品でしかないし、おそらくは作者もそれをわかっている。外に出ているように見せかけて笑ってみせるのって、小説を書くという行為自体は抜きにして、わりと簡単だと思うわけですよ。主要登場人物もその枠組みに対して毒を吐いているように見えて、その実、愛を吐き出しているようにしか見えない。たぶん作者は書いている間、ものすごく楽しかったんじゃないだろうか。そういう意味で作者の立ち位置は結構好み、ただ作品の評価という意味では別に面白くも新しくもないと思うので。あるジャンルにおけるコードなんて煮詰まったら上手く利用されるかパロディ化されるかのどっちかでしょ。これだったら麻耶とか殊能の方が利用の仕方は上手いよね。ところでタコってそこまで怖い? 確かに怖いのはわかるけど…。