『インディゴの夜』加藤実秋

インディゴの夜 (ミステリ・フロンティア)

しがない一ライターの高原晶は、ひょんなことから渋谷の隅でホストクラブのオーナーを勤めることになる。そのクラブのコンセプトは彼女自身がふと思いついた「クラブみたいなハコでDJやダンサーみたいな男の子が接客してくれるホストクラブ」。すぐさま人気のクラブとなったが、同時に客や従業員が事件に巻き込まれる。事件の解決に乗り出すのは、俄か探偵団となったホストクラブの面々。

えと第10回創元推理短編賞を表題作『インディゴの夜』で受賞した著者による、シリーズ短編集。感じとしては渋谷版IWGPてなところでしょうか。視点人物こそ30過ぎの女性ですが活躍するのは渋谷界隈に詳しいホストクラブの若者面々。ん〜ま、文章は割と巧いし、20前後の若者の行動なんかを30過ぎの女性からの視点で書いていてある程度、対象化して距離を取ってるところなんかも(ありきたりかもとはいえ)巧いなと思います。ただその反面と言うか、ミステリ的には特に目新しいところはないかな。表題作は割と本格ミステリ的な捻りはあるけど、おそらく本格を指向してはいないでしょう。それからもしかすると現代の少年探偵団的なものも期待されてるのかも。ちょっと厳しいとは思うが。
ところでこの作品のウリの一つに若者文化(帯では「ストリートの現在」)の描写があるんだろうけど実際に、どうなんだろうかね。この手の本を読んで思うのは、いくらしっかりとリサーチしてたとしてもどうしてもある部分がデフォルメされてたり、教科書的なわかりやすい書き方がされてると感じてしまう。いやわかんね。渋谷とかって実際こんななのかな。数回しか行ったことない。