初野晴『退出ゲーム』 ≪評価:4+≫

退出ゲーム
ふむふむ、ほうほう。実に真っ当かつ満足度の高い作品でした。
全四編から成る短篇集で、最初の二編は小手調べといった感はあるものの、解決に至る推理の前提となる部分のロジックが話を展開させる絶妙なフックとなっていて小気味良い。続く「退出ゲーム」は実に素晴らしい。短い中編ほどの長さでありながら、枠を二つ作り、最も内部の枠における解決(?)が外二つの物語を物語ならしめる、という構成はなかなかできることではないように思う。最も内部というのが「退出ゲーム」という一種の劇になるけれど、ここだけ見ても探偵の推理の恣意性こそが物語を展開させるという作者の意識が垣間見える。そして四編目は実は「退出ゲーム」と姉妹編とも言える構成。先ほどは「ゲーム」という形で探偵と同じ土俵に上がっていたワトソン役が、そこに上がっていなかったら、このような形になるという点で。
ちょっと探偵役が顧問の先生に恋しているという設定が何のためかわからなかったり、一話目で匂わせていたことが展開されてなかったりということがあったりするけれど、総じて気になるレベルではない。というか青春小説を標榜しているからこそ、先生と探偵、ワトソン役の三角形が要請されているんだろう、まさに大文字の「父」的な先生の立ち位置を考えると。これはまだ続編が書ける形なので、是非とも読みたいものです。