三雲岳斗『少女ノイズ』 ≪評価:4≫

少女ノイズ
長編と思ってたら短編集でビックリ。ま、僕が悪いんですが。
とりあえず三雲岳斗のミステリとしては久しぶりなんじゃないだろうか。個人的にこの作者の書くミステリは、バランスはいいけれど変に落ち着いちゃったものという印象で(だからまぁ今までに読んだものではデビュー作が謎のインパクトという点で一番印象には残っている)、今作もその印象は変わらないけれど、それでもそうした点が逆に上手く作用していると感じた。トリックやネタに重心を置かず、むしろなぜそれが謎になったのかという点に立脚して推理や構成が組み立てられているため、解決が単なる説明にならずに、なるほどという驚きを生んでいる。本格の短編としては実にまとまった形だと思う。これは例えばドラマ化されても、割と破綻せずに上手くいくんじゃなかろうか。なかでもベストはやはり「四番目の色が散る前に」か。ネタ的にはちょっと詰め込みすぎだけれども、短編という制約の中で上記のことをクリアしつつ、解決を多段構成にするという辺りが素晴らしく、毎年恒例の『本格ミステリコレクション』に収録されると予想しておきます。って、奥付け見たら雑誌連載で2006年のやつだから駄目ですね。