2005年の10冊+α②

おそらく一般レーベルにおいてはミステリ期待の新鋭による一般レーベル第一作。作者が拘って書き綴る、思春期ではなく「少女」の感性が見事にまとめ上げられた佳作。一つ処に落ち着かず、極と極の中間を彷徨い、武器としては脆く、しかし切り捨てるには鋭すぎるその感性を作品に上手く結実させている。

前作『幽霊には微笑を、生者には花束を』で、SF的特殊設定を用いた謎解きを見せてくれた作者のシリーズ二作目。前作での特殊設定を、今度はきっちりと前提にした上でさらに錯綜した謎解きを展開する手腕は見事。

こちらもSFとミステリのジャンルミックス。その双方において、認識の問題を取り上げることで、結果として後期クイーン的問題に取り組んだ作品になっている。本格ミステリとして、評価は難しいが、その問題意識の射程は明らかに本格ミステリに及んでいる。

古典部シリーズ続編『クドリャフカの順番』も刊行しているが、作者の新境地ということでこちらを。ハードボイルドに自らの作風を溶け込ませつつ、反転する構図などの本格ミステリ的な面にも目配りを忘れていないアベレージ的作品。

戯言シリーズ完結。作者の物語的文法の構築の上手さが目立った。

  • 『どんがらがん』アヴラム・デイヴィッドスン

本格ミステリ界の曲者、殊能センセが訳を担当しただけあって、何とも奇妙な味わいを持つ、奇想コレクションの名にふさわしい一冊。こればっかりはおそらく合う合わないで決まるので、気になった方はぜひ立ち読みを。

  • 『探偵小説と二〇世紀精神』笠井潔

「ミステリマガジン」連載評論の第31〜60回分を単行本化。前半の本格ミステリにおけるコードの分析等はそれなりに読ませる。しかし数ページの連載という体裁の悪い面として、論の充分な展開がない、論の飛躍やずらしが多発する点が残念。さらにキャラクターという側面にも拘り過ぎか。後半は・・・。ま、状況論なんてこんなもんですよねはは。てな感じ。

気鋭の社会学者による、現代社会を「カーニヴァル」から読み解こうという試み。全体的に素直な論述で読みやすく、なおかつ様々な視点を提示してくれる。しかし(議論が少し抽象化する第四章だけでなく)他章も、若干、表層を撫でたような感があるところ、さらに全体として論点の提示で終わっているところ辺りが気にはかかる。

以上、去年の10冊+αでした。別に順位とかは関係なし。