『DOLL IN THE BOX』CRISTINA

Doll in the Box
ZEレコードがアイランド・レコードとの提携後、最初のアーティストであるCRISTINA。彼女の1stと2ndがZEより初CD化され、こちらはその1stになります。
そもそもZEとは主にパンクとディスコを融合させた音源を出すために作られたわけですが(そのことが如実に表れているのがJames Chanceでしょう。)彼女のこの作品はどちらかというとディスコへと大きく振り切れたものとなっています。他のZE再発モノと比較しても、音がスカスカなJames ChanceやLizzyとは異なり、ホーンやコーラスやその他様々な楽器や音が入っていて、その点で豪華な印象を受けます。(その点ではWAS(NOT WAS)に近いでしょうか。現に彼女の2ndはWASのドン・ウォズプロデュースです。)しかしそれらの音が何というかことごとくチープな感じの音になっていて、何とも奇妙な味を出しているわけです。
そして何よりVoであるCRISTINAの声が素晴らしい。お世辞にも上手いとは言えないそのVoですが時に艶やかで時に子供のようで時に無感情で、というその声の「色」の豊かさには驚かされます。この声が先ほどの奇妙な味のあるディスコサウンドに乗っかることで、曲もまた様々な表情を見せ始めます。安っぽいクラブでかかるような曲もあれば、オシャレなカフェなんぞで聞いても違和感がない曲もある。それはこの作品では全く欠点ではなく、繰り返しになりますが魅力の一つになっています。(どちらかというと再発の際に)おそらくある程度までは計算されたものでは、とも思います。中でも著作権の関係で発売後に回収されたという、M-8が珠玉の出来なのです。変化しながらも基本、ループしていくトラックの上にぶっきらぼうに投げ出して喋るようなCRISTINAのVo。POPでありながら非常に不穏な雰囲気と毒を撒き散らすという作品の主要な一側面がはっきりと出ています。
とまぁ全体的にPOPな仕上がりになってはいるものの、上記のような理由でどこまで一般性があるかはわかりませんが僕はとてもいい作品だと感じます。興味のある方はぜひ手に入るうちにどうぞ。また2ndは今作よりもどちらかというと低音が効いていて、FUNK、ROCK寄りになっています。音がより派手になっていることも含めてドン・ウォズプロデュースということがあるんでしょうが、それでもやはりCRISTINA色の作品になっているのでこちらもオススメです。