『羊の秘』霞流一

羊の秘 (ノン・ノベル)

古道具屋の露沢は古書喫茶の主人、乾の紹介で仲丸伸之の持ち物の売買を引き受ける。しかし約束場所の土蔵にあったのは仲丸の死体だった。しかも全身に紙を巻かれ、口には鉄の矢印を押込まれた状態で。彼が入っていたサークルの周辺から事件の調査を始める露沢と伊羅水姉弟だが、メンバーの一人がまたもや奇妙な装飾を施されて殺される。事件の背後には何故か羊のモチーフがそこかしこに顔を覗かせて・・・。

ごめんなさい、次のこれはどうしても載せたかったので(笑)。この推薦文をきちんと全文載せているアマゾンにはやるな、と思った。

ふくらむぞドリーム!燃え尽きるほどフレーム!響け、地底のスクリーム!
目ン玉飛び出る超絶トリック(ディクスン・カーの間合いと、大阪圭吉の太刀筋)+見立て尽くしのディープな裏ネタ+最強フィニッシュ技”消去法の美学”――永遠の男子中学生魂が本格ミステリに求める熱いロマンと妄想のすべてを具現化した秘宝館、それがッ!霞ワァァールドだッ!! 法月綸太郎(表紙裏より)

霞流一の〈獣道ミステリ〉最新刊。今回は羊です。まずは法月の推薦文を堪能しましょう。
彼の作品は僕はあまり好きではなくて、おそらくその理由はこの動物縛りにあると思う。ある動物を作品の筋に据えようとすると、ミステリではどうしても見立てという部分に重ねることが多くなると思うけれど、そうなってしまうと見立てのための見立てとなってしまって面白さがなくなるように感じる。見立て殺人と言うのはもちろんミステリの一つの要素として好きだけれど、そこにはやっぱり何らかの必然性が欲しい。基本だけど何らかの理由でそうせざるを得なくなったというような。今回も見立てに対してはあまりいい感想を抱けなかった。しかし霞流一バカミスと呼ばれつつも実はかなりのパズラー志向を持っていて、ほとんど必ずどの作品にも細かい論理の積み重ねがある。法月も推薦文で言っているけれど今作は馬鹿々々しいとも言えるトリックと見立て、それと論理志向の部分と三つからなっている。これは霞の他の作品にも言えること。その論理志向の点が派手な見立てやトリック、お寒いギャグなんかに隠れて目立っていないのは少し寂しい。今作でも犯人特定には消去法のロジックが使われていて、なるほどという感じ。まぁただ霞のロジックはかなり穴があるというかぎこちないというか、そうした部分がすぐに見えてしまうのでその辺りをもう少し上手く書いてくれるともっと評価できるのにと思う。これは彼の作品の中でも割とまとまっている作品かなという印象。