『見えない人影』氷川透

見えない人影―各務原氏の逆説 (トクマ・ノベルズ)

何に対しても無気力な女子高生、栗林晴美。しかし兄の影響で覚えたサッカー知識のためにサッカー部のマネージャーになってしまった。そんななかインターハイが迫ってきた時にエースの不破了介が失踪し、翌日死体となって発見される。事件を知った軽音楽部の桑折亮は用務員の各務原氏に相談することを提案し・・・。

氷川透各務原氏の逆説シリーズ第二弾。こいつはいただけないなぁ。一作目では軽いミステリながらも、各務原氏が一般常識に対し妙な逆説を提示する部分と事件の真相を論理的に解決する部分のバランスが取れていたけれど、今作では逆説は確かにあるけれど、事件の真相解明の部分が弱過ぎる。いや弱いというか、犯人はサッカーボールを被害者の頭に蹴り当てたという事件の重要なファクターの一つ、それに対する考察が甘すぎると思う。ミステリ慣れした読者ならボールで被害者を昏倒させた者と殺人者が別である可能性、それとそのボールを蹴っていたのが左足だからといって犯人の利き足は本当に左なのか、ひいては本当に被害者を昏倒させるつもりで蹴ったのか、この辺りのことは割とすぐに思い浮かべると思うんだけどな。それをしないことで事件を複雑に見せているように感じる。このシリーズよりも論理一辺倒の氷川シリーズを読ませてください。