『QED 鬼の城伝説』高田崇史

QED 鬼の城伝説 (講談社ノベルス)

夏休みに岡山に旅行することになった棚旗奈々や桑原崇らだが、行く先でまたもや奇妙な事件と関わりを持つ事になる。鬼野辺家には代々伝わる大釜があるが、その釜が鳴ると当主が死ぬという言い伝えがあった。そして言い伝え通りに釜が鳴り、長男の生首が・・・。果たして吉備津神社に伝わる「鳴釜神事」、そして鬼神温羅(うら)、さらには桃太郎伝説との関連は?

早いものでQEDシリーズも9作目。今回は岡山、つまり桃太郎伝説と鬼がメインになっています。今作では作者の史観が久しぶりにストレートに表れています。「鬼」とは何だったのか、またそう呼ばれたのはなぜか。そしてその観点から桃太郎伝説はどう読まれるのか。これまでの考えの延長ですが、やはりこのシリーズは歴史の闇を掘り返す部分が滅法面白い。一方、現実の事件の方ですが、個々の真相には特に目新しさはありません。ダイイングメッセージの使い方は少し意表をつかれましたが、それも新しい使い方というわけではない。ただ事件と歴史を繋ぐ部分に驚かされました。こうしたリンクのさせ方は第三作で見られたような実に思い切った方法だと思います。ちょっと話が大きくなりすぎている感もしますが、過去の支配者が現代に至るまで人々にかけた「呪」、というまとめは綺麗なのではないでしょうか。さて次回作のテーマは何になるんでしょうかね。個人的には前に触れられていた伊勢を楽しみにしているのですが。