『kocorono』bloodthirsty butchers

KOCORONO

何故かいつまでも「孤高の」という枕詞が消えないブッチャーズのメジャー2ndアルバム。よく彼らの傑作とも評されるこの作品だが、そうした評価もむべなるかな。確かに傑作だ。それも切ない傑作。
この作品では全てが不安定のまま投げ出されているが、そのことが逆に全体をまとめあげてしまっている。楽器一つ一つの音と演奏はどこか荒くてザラザラした手触りを持っており、ギター、ベース、ドラムの三つが完全に一つに調和せずに妙な座りの悪さが漂ってくる。そこに乗るメロディーとその歌詞はどこまでも儚く美しくて、Voはぶっきらぼうに投げ出される。驚くべきはこうした要素がトランプタワーのように一つ一つは不安定ながら、結局はあまりにも切ない一つの大きな作品を作り上げている点。そしてそれを支えているのは、曲の中でいくつか生み出されている隙間なんだと思う。
調和しない三つの楽器音の隙間、静と動を往復することで生まれる隙間。
そしてその隙間を押し潰されないようにしているのが、Voとギターノイズとハープ音なんだろう。だからメロディーと歌詞は泣きそうなほど美しく儚くて、ハープ音は今にも消えそうなか弱さで鳴らされる。完全に一つとならない楽器の隙間から吹き抜ける風の音が聞こえ、その音を打ち消すかのようにギターノイズとハープが鳴らされるM-4からの流れは感涙もの。今にも倒れそうだからこそ、圧倒的な美しさを持つ傑作。日本人でよかった。