『グラスホッパー』伊坂幸太郎

グラスホッパー

恋人の復讐をするために仇の父が経営している会社に社員として潜り込んでいる鈴木。対峙した相手を自然と自殺に追い込むという殺し屋「鯨」。鮮やかなナイフの使い手、殺し屋「蝉」。彼ら三人の運命は、鈴木と鯨が目撃した鈴木の仇の男の交通事故によって交錯し始める。その事故には「押し屋」と呼ばれる、標的を事故に見せかけて殺す殺し屋が存在しているようだった。
事故の後、現場から立ち去る男を尾行し家を突き止めた鈴木だが、家の前でその男と鉢合わせしてしまう。迷った鈴木が取った手段とは。「息子さんに家庭教師をつける気はありませんか?」
「鯨」には過去に自殺させ損ない、「押し屋」に先を越された標的がいた。それを悔いていた「鯨」は自らの清算のために「押し屋」と対決することを決心する。「『ナウズ・ザ・タイム』。今がその時」
20代前半の「蝉」は自分に仕事を回してくれる岩西に駒のように操られていると感じていた。そこで「押し屋」を始末することで岩西を驚かせ、のし上がろうとする。「俺は自由なんだっつうの」

というわけで。
推理作家協会賞を受賞し、直木賞候補にもなり。ただいま絶好調の伊坂幸太郎の書き下ろし新作。割と普通だなぁ。『オーデュボンの祈り』ほど奇妙でもなく『ラッシュライフ』ほど凝った構成でもなく『陽気なギャング〜』ほど伏線が緻密なわけでもなく。まぁ比較的ラッシュライフに似た感じではあるかも。
例の如く、村上春樹を思い起こさせるおしゃれ(っぽい)会話や文章で書かれていてリーダビリティは非常に高い。それはいいんだけど読み終わってあまり感じ入るところがない。『重力ピエロ』でも感じたことだけど。
単純にいい話ではあるけど、個人的には伊坂幸太郎はどことなく奇妙な寓話性を持った作品か『ラッシュライフ』のようなあからさまな人工性を持った作品を書くことにより長けていると思う。この作品も殺し屋の対決っていうある種、人工的なものがメインになってはいるんだけど、どうせならもっと空想的な舞台の上でこれを書いてもよかったんじゃないかな。あんまり特筆すべき感想はないです。
ちなみに角川書店のHP内に公式HPまであったりする →こちら