『QED 〜ventus〜 鎌倉の闇』高田崇史

QED  ~ventus~  鎌倉の闇 (講談社ノベルス)

棚旗奈々は妹の佐織の鎌倉取材に着いていくことになった。彼女達に同行するのは桑原崇、人呼んでタタル(祟)。はたしてタタルが明らかにする源氏、そして鎌倉の真の姿とは。さらに同時に鎌倉で起こった事件との関わりは?

QEDシリーズ第八弾。今回はトラベルミステリーとして書かれたらしく、鎌倉の様々な名所や寺院等の紹介が織り込まれている。とはいえ、QEDシリーズのこと。単なるトラベルミステリーに終わってはいない。源氏が何故、鎌倉に居場所を定めたのか、鎌倉とは一体何だったのか、に対する答えがなされる。その答えに関してはどこかで聞いたことのあるような気がしないでもなかったけどやはり楽しんで読んだ。
で問題は作中で起こる事件なんだけど。ええといっそのことQEDでは事件を起こさずにいったらどうでしょう?(笑)まぁ全く関係がないかというとそういうわけじゃないんだけど、鎌倉の謎と関わるのはその構造だけなのでは。事件だけを取り出してみれば、たぶん過去の作品に類似したものはいくつかあると思う。ただその構造は鎌倉に関するものときれいに合わさっていて、上手く処理されてる印象は受けた。あと微妙に解決がアンフェアのようにも思えるなぁ。あの状況でああ言われたとしても読者としてはやはりまずその言葉を疑うわけで、というかあそこでは疑うしか道がないはず。それを疑わなくさせている、だろうのは小松崎の体質(クセ?)なんだろうけど、これがなぁ。第2の事件の目撃者でもある小松崎はウソを聞くとクシャミが出るという特異体質でその体質が事件を不可能状況に見せるのに一役買ってるんだけど、あの解法をするのであればこの特異体質を事前にもう一度読者にアピールしておけばよかったんじゃないかな。シリーズ読者じゃないとわからないし、一度アピールしておけば不可能状況ってことを強調できたと思う。逆に言うなら、それを理解してたり覚えていないと簡単に犯人がわかってしまってそんなことを不可能状況のように書いていることに少し興醒めしてしまうかもしれない。まぁ薄い本だし、鎌倉の謎に関する本と思って読むと非常に楽しめるだろうと。で、次のQEDはいつなんでしょう?早く読みたい。