『モーツァルトの子守歌』鮎川哲也  

モーツァルトの子守歌 (創元推理文庫)
まだ半分ほどしか読めてないけど。三番館シリーズについて。やはり全体としてレベルは高い。一つ一つを見ていくと初期のもののほうがいい出来かもしれないが、後期も充分レベル自体は高いだろう。初期はなかなか凝ったトリックなんかがあったりして充実していたけど、後期はむしろ簡単なワンアイデアをふくらませて話にしている印象。でも何気なく伏線をはる手腕なんかは見事としか言い様がない。鮎川哲也の短編のみで充分、本格のお手本。
一つ感じたことを書くなら初期から後期に移っていくと次第に論理の飛躍、着想の飛躍が目に付くことか。これは出来が悪いということではなく、本格の論理には大なり小なりそうした飛躍があるもの。それがないとつまらなくなる。そこで思ったのはシリーズものが進んでいくにつれ、そうした傾向になるのは何もこのシリーズに限らないのではということかな。その辺りを突っ込んで考えてみると面白いかもしれないなぁ。そこから本格ミステリにおける論理の特殊性が浮かび上がってくるかも。