石持浅海『温かな手』 ≪評価:4≫

温かな手
以前にアンソロジーで、「陰樹の森で」を読んだ際には結末で石持の悪いところと個人的に感じている部分が出ていると思ったんだけれども、こうしてシリーズがまとまってみると、別にそっちに引き寄せて考える必要はないなと。この人間以外の知的生命体による探偵という設定は、例えばロボットという形でこれまでにもある程度は散見されたものだけれど、それを「人間味の感じられない」名探偵という文句への直截な解決という点に絞って使用する辺り、本書の帯に「石持ワールド全開」とあるように確かにこの作者らしい使用法だと思う。
どの短編もそれなりに奇抜なことを取り出してきていて、それを何とか上手く見せかけているんだけど、やはり微妙にちぐはぐさが残るようなところもあり、しかしむしろそれによってこの作者の味というか設定への気配りが見えているんじゃなかろうか。長く書き続けていけそうなシリーズだけれど、最後のオチのつけ方は実に綺麗にまとまっていていいですね。