西尾維新『不気味で素朴な囲われた世界』 ≪評価:2−≫

不気味で素朴な囲われた世界 (講談社ノベルス)
西尾維新の問題作、傑作、ふざけんな作、と人によって感想はもちろん異なるだろうけれど、とりあえず『クビシメ』に続いて話題となった『きみとぼくの壊れた世界』と同じ世界を舞台にした(と思われる)、しかし別物の作品。とりあえず感想としては、んー、ぬるい。以下、おそらく読んでない人に真相を予見させないとは思うけれどとりあえず。
前作がそれなりに話題となったのは、やはり何といっても当時の諸々の言説という対抗軸があったためで、それゆえにメタ的な緊張感というものが作中に織り込まれ、同時に読者にも強いられたのだけれど、今作にはもはやそのような緊張感がなく、とまぁこれは二〇〇〇年代前半以降、ライトノベルやらを中心にこの手の作風が割りとメジャーになってしまったということもあるんだろうけれど、それでも作品内にも緊張感がなくて、登場人物の言葉遊びでなんとか読ませるという、どうにもこうにもな事態になっている気がする。
そもそも病院坂迷路のキャラ設定がどうなのかな。徹底的にしゃべらず、語り手兼主人公である弔士が表情から言わんとしていることを読み取るってのは、設定としては面白いけどそもそもそんなもんただの道化役で実質、主人公は延々独り言を言ってるのと変わらない。もちろんここにあるのは、あからさまな名探偵批判だろうし、そのように読むと今度はやはり犯人による操りというものが視界に入ってくることになるわけだけれど…。結局、本格に対する一種のアンチとしてあるものの、そこで提出されていること(≒真相)は正直、目新しいものではなく、そのような視点で作品を読んだ読者にとっては厳しいものだった。あと作品内リアリズムとキャラクター的視点が矛盾してる気がする。あぁ、矛盾じゃないのか、メタとメタメタの違いか。ま、微妙でした。