『Flightplan』

ふむ。id:learn君が何やら言っていたので借りてみた。まぁなんというか突っ込みどころは多いけどそれなりかね。というかミステリ読みの性としてやはり情報提示の手順やら計画の運びなんかに目が行くわけだけど、そうした点ではかなりお粗末。後述するように割と観客目線を重要視しているように感じたけど、作品内レベルとメタレベルの使い分けは上手くないと思う。ただ短い時間にしてはかなり濃密なサスペンス性があり、物語もかなり転調していくにもかかわらず、それを気にさせない展開で、その点では面白かった。
で。彼の突っ込みについて。まずカーソンが犯人だと観客がわかった直後に共犯者(女性乗務員)がいるのもわかるというシーンですが、これはここにしか入れられないんじゃないかな。ここは明確に観客を意識していてカイルが何気なく彼女に尋ねたことが彼女の疑心暗鬼を誘ってラスト近くで飛行機から逃げ出してしまう(つまりカーソンを助けない)ことの伏線になっている。んでさらにこれを入れておくことで、娘は機械室にいるということをカイルが見抜けることになる(もっとも共犯者との描写されている会話では彼女がどこを探したかということは明らかになっていないんだけれど、まぁあえて考えればカーソンが爆弾を設置しているときに話したということか。しかしこの点はやはり観客の理解を優先した造りとして考えたらいいのかな)。引っ張れなかったのは時間上の都合かなぁ。
あとカーソンが「ついてるぜ」みたいなことを言っていた、という彼の記憶は幻想だったようで。英語字幕ではカイルがまずこう言い、「My husband didn't jump off that building. He didn't fall off it either.」それを受けてカーソンはこう言っている。「You're taking things too personally. We needed a coffin because they aren't X-rayed. We needed a credible hijacker who knew the plane. Those are the breaks.」この3文目で、カーソンがあらかじめこの家族をターゲットにしていたことが読み取れるわけで。さらに2文目は直訳すれば「あんたは個人的に物事を受け取りすぎだ」で、実際の訳では「個人的な恨みはない」となっている。なので完全に夫は棺のためだけに殺され、飛行機の内部に詳しいカイルをハイジャック犯としてでっちあげる、そして最終的には彼女は最後の場面で銃殺し、そこで爆弾を爆破させて(カイルが最後に爆破したと見せかけて)娘も殺してしまう、という計画だったわけか。うわぁなんて穴だらけの計画。
あと最初に向かいの窓から部屋を覗いている男二人は完全に観客に対するエクスキューズだと思う。これがないと飛行機の中で似た男を見つけて問い詰めるというシーンに説得力がなくなってしまうから。そもそもがカイルに感情移入しないといけないようになっている映画なので、それを入れておかないと彼女に感情移入できないわけですな。そうしないとそのシーンだけカイルは精神がやられてるんじゃないかと思っている他の乗客や乗務員の視線に観客が同化してしまうので。