『円環の孤独』佐飛通俊 ≪評価:3≫

円環の孤独 (講談社ノベルス)

世界初の宇宙ステーションホテルで殺人が発生。殺されたのは、三年前のタイムトラベル中に起こった事件を解決したと公言していた探偵だった。ホテルに集まっていた当時の事件関係者が犯人なのか。しかし犯行現場は、DNAによるロック方式を用いていて本人以外は開錠施錠が不可能な部屋だった。

この人、新人なんだけど91年に『群像』評論賞の優秀作とってるんだね。感想としては、手堅くまとまった本格ミステリかな、と。おそらく黄金期本格をかなり読み込んでいるであろう部分が随所に見えて、それを上手く作中に取り込んでると思う。
ただ一方で特にこれ、というところがないのも確か。終盤のちょっとしたロジック辺りは今後に期待できる(論理一辺倒のものを書いてくれるかもということで)けど。
それからやはりミステリとこうした生体認証は食い合わせが悪いのかな。こうした未来を舞台にした本格ミステリはちらほらあるけれど、多くがそうした堅固なセキュリティ等を破るのに、その盲点を突くという形を取っている。それはそれで面白いんだけど、結局そうしたものにアナクロな方法で対するという形しかとれないのかな。こうした点はもう少し考えていきたい。