2005年の10冊+α

刊行する作品のほとんどが本格ミステリの最前線である麻耶雄嵩は、ミステリーランドでも手を抜かない。本格ミステリの限界に挑み続ける彼が、『夏と冬の〜』における手法に捻りを加えて出来た新たな試み。メタレベルを登場させるだけではなく、さらにその中でいかに本格ミステリを成立させるのか。か? 最高です。

今年ランキングでも、さらにネットでも話題になった作品。しかし何と言っても構図の反転の鮮やかさは今年随一。その鮮やかさに本格か否かなんてのは二の次。

飄々とした語り口でミステリ界にするりと立ち位置を作ってきた作者が、これまた飄々するりと送り出してきた佳作。真相のある種の馬鹿さ加減を語り口やボケで覆い隠し、見事に自らの作風をミスリーディングにし、さらになおかつ近年の問題系、「偶然」への対処法をも提示するすばらしさ。東川篤哉侮れず。

高水準の本格ミステリを安定したペースで刊行し続ける作者の、本領発揮とも言えるシリーズ。中編に近い分量の作品が並べられているが、そこに詰め込まれたアイデアたるや半端なものではない。

ひとまず今日はここまで。