『セリヌンティウスの舟』石持浅海 ≪評価:3−≫

セリヌンティウスの舟 (カッパノベルス)

ある日、ダイビング中に荒海に投げ出された六人。バラバラにならないように数時間、海上で輪になっていた彼らはお互いに強い連帯感を持つようになった。その二年後、いつものようにダイビング後に皆で飲んだ後、メンバーの一人、美月は青酸カリを呷って自殺した。彼女の死から二ヶ月後、再び集まった五人はあの時の一枚の写真に奇妙な点を見つける。彼女の死の意味とは?

毎回、高い評価とどこか釈然としないという評価を受ける石持浅海の六作目。彼の作品の特徴の一つとして”信頼”というものが挙げられる。『月の扉』では一人の人物を介して強い仲間意識を持ったサークルが描かれ、『水の迷宮』ではある一つの夢に向かう人物たちが描かれる。今作ではその特徴がさらに一歩突き進められているが、この部分を受け入れるか否かで今作に対する評価は大きく分かれてくるのではないか。本格ミステリの一つの論理展開として、ある仮定に対してそれは心情的に理解できないというものは確かにあるが、つまり今作ではその方法論が幾分、肥大化させられて使われているから。そこを飲み込んで読まないと作中の論理展開に疑問符が付けたまま読み進めることになってしまう。とはいえ、こうした部分を肥大化させ、最後までこれを論理展開の肝として話を進める辺りはやはり上手い作家だなと思う。また本格ミステリの形式という点からも若干、面白いか。