ミステリと”偶然”

〈黒い水脈〉=四大奇書に連なる第五の奇書!

今月の講談社ノベルス山口雅也『奇偶』がありますね。これの帯がなかなかすごい文句を並べてあるわけです。いやこれは別にどうということもないんですが。ミステリにおける偶然というのはかなりの勢いで禁じ手とされてきたわけですが、90年代以降においてはむしろ積極的に許容されてきた面がある。どういうことかというと、これは最近巽昌章が言っていることと重なる部分があるけれど、最近のミステリでは事件の根幹や中心に偶然が顔を出しているものが多い。この『奇偶』が出たのが2002年でどうも象徴的だなと思う次第です。ん、すると同年に佐藤友哉西尾維新が偶然を否定するような言明を自作中でしているのも関係してくるのかもしれない。