『QED〜ventus〜熊野の残照』高田崇史 ≪評価:3−≫

QED ~ventus~ 熊野の残照 (講談社ノベルス)

桑原崇と棚旗奈々は薬剤師会の親睦会で熊野に来ていた。いつものごとく祟は熊野三山に纏わる謎を調べるために来たようだった。一方、薬剤師の神山は実家が熊野ということを隠して旅行に参加していた。過去に自らの身に起きた悪夢を思い出しながら。彼女がタタルらと行動を共にする中で明かされる熊野の謎とは?

早いものでQEDシリーズも10冊目。最も今作は題に「ventus」とついているのでどちらかというとトラベルミステリー風味の仕上がりとなっている。前作の「ventus」では歴史考察と事件が見事に噛み合っていなかったため、今作ではどうしているかと思えば・・・。
なるほど、そういう形できましたか。ネタバレになるので多くは語れないけど、おそらく長さも短めに決められている「ventus」ではこれくらいの試みをするべきだったと思う。一応、最後の部分で歴史と事件を絡ませようとしてるけれど、むしろ別物にしてしまってもよかったのでは。歴史に関しては今回はちょっとわかりにくいかなと。名前の読み替えなどが頻繁に出てくるのでしっかりと頭に入れていかないと置いてけぼりにされる。その意味で軽く読み流せるものじゃない。ここ数作、QEDシリーズはレベルが落ちているようにも感じられるので新年に出るのに期待(出るよね?)。それでも歴史部分なんかで一定の面白さを保っている辺り、いいシリーズだと思う。