『クドリャフカの順番』米澤穂信

クドリャフカの順番―「十文字」事件

いよいよ折木奉太郎らの高校の文化祭が始まる。奉太郎の所属する古典部は『氷菓』事件の顛末などをまとめた文集を発行することになった。しかし手違いで文集を大量に刷ってしまう。少しでも売るために行動する部員達。一方で文化祭では奇妙な予告盗難事件が起こっていた。何とかこの事件を利用して文集の売上を伸ばそうとするが・・・

米澤穂信第五作は『氷菓』『愚者のエンドロール』に続く古典部シリーズ第三作。時系列的にも前二作の続きとなっているので、そちらを先に読んでいた方が楽しめる、かな。というかすでにネット上で書評が出回り、評価も高いので手短に。
まず前二作と違い、視点の移り変わりが激しくなっている。最初は少し戸惑ったけれどこれが文化祭の慌しい雰囲気や売上促進のための焦燥感を表していて、上手いなと思う。でもその一方でそうした雰囲気を脱臼させるような場面が散りばめられており、その辺りにこの作者の魅力が。ミステリ的には新しいというわけではないけれど、様々な小技を重ねていきなおかつそれを作品の雰囲気に溶け込ませているのも、この作者ならでは。ということで非常に楽しく読ませていただきました。実は先ほど次作『犬はどこだ』も読了したけど、こちらもなかなかによろしい一冊で。