『海の底』有川浩   ≪評価:3+≫

海の底

神奈川県横須賀。春のある日、そこに奴らは海の底からやってきた。人間という食料を求めて。機動隊と電流柵で一時的に侵攻は食い止めたものの、奴らを倒すには自衛隊の力が必要だった。しかし米軍は不穏な動きを見せ、政府は一向に自衛隊に出動要請をしない。一方、横須賀基地の港に残された自衛隊艦「きりしお」には自衛官二人と逃げ遅れた子供数人が避難し、孤立していた・・・。

いいよいいよー。前作『空の中』ではSFの王道を見せてくれたわけですが(そのREVIEWはこちら。
今回は怪獣ものの王道、と言っていいんじゃないでしょうか。や、怪獣ものもSFではあるんですがね。作者も非常に自覚的で作中で『ゴジラ』に言及してるし、何より奴らの生態を研究する人物の名が芹澤(笑)。すぐにそのことにも言及されるけど、知ってる人はニヤリとするだろね。小説版『ゴジラ』は小学校の時に10回以上読んでるので、なんとはなしにうれしい。
ただ前作よりさらに展開に新味がないのはちょっと残念。警察と自衛隊の関係とか、そこと内閣の絡み。あと米軍との兼ね合いとかネット上の軍事オタクの話とかいくつも掘り下げられるところはあったと思うし、そうしたらより読み応えは出たと思う。その辺りはまぁ、作者も意識的にしてるんだろうとは思うけど。後書きでも言っている怪獣とベタな青春と恋愛ですが、今回は青春部分はさすがに紋切り型過ぎる気がしないでもない。でも恋愛部分はベタベタだけどサラッとしててほのぼのしてて、いい、です。つかまとめ方が好き。正直、ハードカバーで出す意義ってのはあまりないと思うけど、この作者の作品はしばらく追ってみることに。