『ファウスト Vol.4』雑感

ひとまず「文芸合宿」の五短編とリレー小説、それ以外の北山と西尾の短編読了。

  • 『子供は遠くに行った』乙一

相変わらず、読者と対象との距離を取らせるような文体や乙一らしい設定がいい。個人的には主人公ではなくその彼氏の恋人があの人だったという部分が面白かった。つまり彼氏は結局、「上京」出来ていないとも読めるわけで。そう考えると主人公は最後にああすることで「上京」出来た?ではあの手紙はどう読み解く?うん難しい。

構成に光る部分があると思う。もう少し分量があれば二人の関係にふくらみをもたせることが出来ておそらく北山が書こうとしていた「近くて遠い存在」という部分に焦点が当たったのでは。

あまり面白くない。佐藤は最近、作品の中に一種のメタレベルのような存在を出してきてるけどその存在が作品に何か意味をもたらしているかというと、そうなっていないと思う。あまりそういう単純な方向に向かってほしくない。

  • 『新世紀レッド手ぬぐいマフラー』滝本竜彦

設定が滝本の書きたいことと上手く合わさっている気が。たぶん滝本と北山がこの企画で書きたいテーマは割とかぶっていて滝本の方が上手くそれを書き出していると思う。というか分量内でわかりやすくまとめている印象。

なんというかやはり上手い。この作品はおそらく『ユリイカ』の山田和正の論を少し下敷きにしてるのかなと。地方と都市圏にラジオと携帯を重ね合わせているわけだけど、そこで少しねじれを加えて携帯でラジオを聴くという設定が面白い。ただ残念なのは、それで聴いている番組が非常に限定されたものになっているところかな。

とりあえず乙一、滝本、西尾は「上京」というお題をきちんと消化していると思う。北山はあまり「上京」に意味がない気がしたし、佐藤はほぼ関係なくなっている。

  • 『誰にも続かない』リレー小説

まぁそれなりに。とりあえず佐藤のパートで笑った。また妹かよ!、事件終わらせるのかよ!って感じで。