『Melody A.M』Royksopp

Melody A.M

ノルウェー出身の二人組によるデビュー作品。この手の音にはあまり詳しくないのでいつも以上に印象批評となってしまう気がするのですが、それ以外のことなど出来ないので、一聴した時に思い浮かんだ単語をいくつか並べてみましょう。それらは「奇妙な暖かさ」「硬質」「脱力ビート」「郷愁」「ゲーム」、このようになります。
まずアルバム全体を通して感じられるものが「奇妙な暖かさ」といえます。それはおそらく親しみやすいメロディーラインやあまり無闇に音を重ねずにシンプルに徹した曲作りによるところが大きいのでしょう。またその他のキーワードからも芋蔓式に連想されうる感覚でもあると思われます。それとは一転して「硬質」という言葉が個々の曲の一つの基調として流れているように感じられます。どこか聞き手を曲にのめり込ませるのではなく、ある一定の距離を保たせてしまう、そんな感覚。あまり急激な盛り上がりのないメロディーや湿っぽくない乾いたリズムから受けるその感覚を「冷たさ」としてもいいのでしょうが、これはやはり音の硬さが聞き手を寄せ付けないのではないでしょうか。
そして「郷愁」と「ゲーム」ですが、つまりはゲーム音楽です。これはファミコンからプレステ2までの変遷がそのまま10代の記憶と繋がる僕にとって、全く悪いことではなく、むしろ、これは山奥の村、これは空飛ぶ乗り物、これはシューティング、これはギードの洞窟のような海底洞窟・・・少し筆が滑り過ぎてしまったようですが、とまれこのように次々とゲームの風景が想像されることは、強烈なノスタルジーを喚起することでもあるのです。
またこのことは前述の「暖かさ」と「硬質」という部分に関連するものなのかもしれません。懐かしいという意味での「暖かさ」。そしてゲームではあくまでストーリーやアクション等が主であってBGMは従でしかありません。そこではやはり受容する側が対象に完全にのめり込めないという現象が起こります。自分でも何を書いているか微妙にわからなくなってきたので最後の「脱力ビート」に行きましょう。これは簡単なことでリズムが弱いということにつきます。これも悪いことではなく、こうした作品の場合は正しい選択だと思われます。これらの曲で無理に踊る必要は皆無ですから。これは聞き込んだり熱中したりする作品ではなく、棚からたまに引っ張り出してきてある時はほっこりし、ある時は冷めた聴き方をし、ある時はノスタルジーにひたる。そんな様々な楽しみ方が出来るなかなか面白い作品ではないでしょうか。DAFTPUNKの2ndなんかが好きな方は聴いてみるとよろしいかと。あれより地味ではありますがいい味があります。